こんにちは。このTECHBLOGで主にUXDについてのイベントレポートなどを投稿させていただいているAKGです。
今後、UXDについてイベントレポートだけではなく、いろいろなナレッジなどを整理していこうと思いますのでよろしくお願いします。
その上で、今回はUXDの起源、歴史について、紐解いていいきたいと思います。

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参考:https://gazoo.com/car/history/Pages/toyota_history_007.aspx

産業革命とテイラー主義

UXDの歴史を紐解くためには、まず産業革命の話からです。18世紀半ばから19世紀にかけて、イギリスでは工場制機械工業の導入により産業の変革と社会構造の変革が起きました。これにより、イギリスは農業中心の社会から工業中心の社会へと変わり、工場内ではいわゆるライン生産方式(工程ごとに作業員を配置し、流れ作業によって制品を作る方法)での仕事が主となりました。
ここで、より効率的であり、生産的な方法を開拓したのが科学的管理法の提唱者であるフレデリック・ウィンズロー・テイラー(以下テイラー)です。このテイラーの提唱した科学的管理法は現代の経営学、経営管理論、生産管理論の基礎の一つにもなっています。これにより労働者の賃金と管理について改善がなされ、労働者の賃金上昇にもつながりました。しかし、単純作業による生産制の向上で社会としては発展していくものの、そこに人間性は一切入り込む余地はなく、人権侵害につながるとして反対運動にも発展しました。しかし、今でもこのテイラーによる機械化での労働者と生産におけるインタラクションの改善は経営学、UXの考え方の元となりました。

人間工学の誕生

そして、20世紀前半(1911年)アメリカ合衆国において、雑誌「エルゴノミクス(人間工学)」が創刊されました。これは人間工学より前からあった機械工学と呼ばれる、機械の設計、製作などから使用方法、運用を対象とする分野では機械を中心に人の行動を制限するようなアプローチに対し、人間を中心に機械のあり方を探るものでした。第一次世界大戦、第二次世界大戦の空軍戦闘機のコックピットの設計問題が発端となり、人間の能力に機械や作業環境を適合させるための研究として進められました。これは今でいうところのIAに近い概念であり、応用心理学から発展した情報を効率よく伝達するための研究となりました。

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参考:https://gazoo.com/car/history/Pages/toyota_history_007.aspx

トヨタ生産方式

20世紀半ばになると、人間工学の考え方を元にトヨタ生産方式というものが日本でも誕生していました。これは工場の機械に合わせて人間が流れ作業を行うのではなく、流れ作業で問題があれば作業者はアンドンで異常を知らせるというもので、人の作業に合わせて生産ラインがあるという考え方です。

※アンドン:工場におけるベルトコンベアなどを用いた生産ラインの生産状態報告システム。

ヘンリー・ドレフュスと認知科学

日本でトヨタ生産方式をはじめた頃、アメリカではヘンリー・ドレフュスによって「人間のためのデザイン」、「人間の尺度」をもとにユーザーを中心にデザインを考察した「百万人のデザイン」という書籍が発表され、ユーザーニーズの理解とデザインに必要な手法が紹介されました。彼はこの書籍で以下のように述べています。

「もし製品と人間の間の連りに矛盾があるならば、その時、デザイナーは失敗したと見るべきだ。反対に、もし人間がその製品との接触によってより安全で快適になり、購入に対して意欲的、効率的、あるいは純粋になり、幸せになったとしたらその時、デザイナーは成功したと信じてよい」

これと同じ時期に、いくつかの分野(心理学、言語学、人類学、神経科学、哲学など)で同時多発的に人の知的活動を情報処理の視点から解明しようとする研究として、認知科学の研究が現れました。これにより、情報処理の観点から知的システムと知能の性質を理解するための研究が進む事になります。

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参考:http://maccle.com/funtime/mac-timeline-for-system1-to-osx-leopard/

SAGEとアップルのGUI

世界初のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)は1963年に実用となったSAGEと呼ばれるアメリカ空軍の開発した防空管制システム(核爆弾を搭載した敵航空機を迎撃するためのシステム)でした。そして、1970年にアーキテクチャー・オブ・インフォーメーションの創出を目標に米ゼロックス社がパロアルト研究所を開設され、1973年にマウスによるウィンドウの操作を導入した最初のコンピュータであるAlto(アルト)の試作機が誕生しました。この成果に触発され、1984年アップルでは商業的にデザインされたGUIでの操作を実現したMacintoshが開発されました。

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参考:http://houston.aiga.org/book-reviews-for-houston-creatives-no-3/

ドナルド・アーサー・ノーマン

1988年に「誰のためのデザイン」を発表し、米アップルコンピューターで「ユーザーエクスペリエンスアーキテクト(User Experience Architect)」として活躍していたD.A.ノーマン博士によって、ユーザーエクスペリエンスという概念が生まれました。これはヒューマンインターフェイスやユーザビリティよりも幅広い概念を示すために造られましたが、彼がWebユーザビリティの第一人者と言われているJacob Nielsen(ヤコブ・ニールセン)氏と共同で設立したコンサルティング会社「Nielsen Norman Group」では、私的な定義として下記のように述べています。

ユーザーエクスペリエンスは、エンドユーザーと企業及びそのサービス、プロダクトとの相互作用についてのあらゆる面を対象とする。真のユーザーエクスペリエンスは質の高い、エクスペリエンスを実現するためにエンジニア、マーケティング、グラフィックデザイン、インターフェースデザインなどすべてをシームレスに統合することが必要になる。

以上がUser Experienceという言葉が生まれた経緯になります。機械化によって失いかけた人間としての尊厳が取り戻され、人を中心にしたものづくり、考え方へと回帰したことで生まれた言葉だったんですね。ユーザーエクスペリエンスという言葉、分野の成長についてはまたの機会に書かせていただければと思います。

筆者プロフィール
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赤木 謙太(AKG)
IT戦略室 デジタルマーケティング部 R&Dグループ
2015年4月に中途入社。UXデザイナー、ディレクターとして新規サービスのディレクションを担当。