2015年4月17日〜19日の3日間に渡って、世界で活躍するUXの著名人を招いたカンファレンスとワークショップ「UX DAYS TOKYO 2015」が開催されました。今回、筆者は18日に開催されたワークショップ「ユーザー体験を可視化しよう」に参加し、「エクスペリエンスマップ」の作成と、その活用方法について学んできました。本記事はそのレポートとなります。

講師のChris Risdon氏は、UXをテーマに活動する世界的に有名なコンサルティングファームである 「Adaptive Path」のディレクターです。
 
speaker-chris
 
当日の参加者は50人弱で、9割以上が日本人、Web業界だけでなく、通信業界、メーカーなど、様々な業種の方がおりました。前半で座学、後半でワークショップを行い、グループごとに分かれてエクスペリエンスマップを作成しました。
 

エクスペリエンスマップとは

商品・サービス開発において、ユーザー体験を可視化することは非常に重要です。ペルソナを設定したり、ストーリーボードを作成したり、サービス提供者たちは様々な手法論を生み出してきました。
同時に、近年の技術進歩によって、ネットとリアルのチャネル双方を駆使したサービス提供が可能になりつつあります。例えばスマホのECサイトで注文した商品をコンビニで受け取れるように、ユーザーのサービス接点はスマホ画面内のUIだけでなく、コンビニの店員の対応なども含まれ、多様かつ複雑になりつつあります。
 
また、注文した商品をコンビニで受け取るとき、同時に買い物をする人も多いことでしょう。このように、全体を俯瞰してみると、ユーザーは自サービスの接点以外でも様々な行動をとっています。このため、これらを整理した上で最適なユーザー体験を追究していく姿勢が重要になってきます。
今回のワークショップで僕たちが学んだ「エクスペリエンスマップ」は、このようにチャネル間で複雑化するUXを理解し、同時にユーザー体験全体を俯瞰しながら設計していくことができる手法論であり、ユーザー体験を「利用チャネル」「行動」「感情」などを含めて視覚的にわかりやすい形で紐解き、図解することを目指しています。
 
UXMap1

ワークショップの内容

当日は「空港」をテーマに、エクスペリエンスマップを実際に作成しました。

1. リサーチ(インタビュー)

まずは空港の利用体験がある人をグループ内で選び、インタビューを行いました。筆者がインタビューした人は、インドに観光旅行に行った際のエピソードについて語ってくれました。今回は「空港」がテーマではあるものの、実際のユーザー体験は空港に到着する以前から始まっており、全体像をいかに把握できるか?は重要なポイントです。このため、インタビューでは、「空港を利用することになった理由」や「旅行の準備でどの点に苦労したか」といったことを含めて質問をしていきました。自サービス接点の前後の時間帯には、新しいユーザー接点の可能性や、既存のユーザー体験を磨き込むヒントが隠されており、それらをエクスペリエンスマップとして可視化することは、新しい企画を考えたいときに、良いブレスト材料となります。

また、今回はインタビューによってリサーチを行いましたが、実際に行動しているユーザーを「観察」することの重要性も強調されていました。ユーザーによって言語化される内容は意識的なものですが、潜在ニーズを掴むためには、無意識的に行っている行動や、思考によるバリデーションがかかっていない状態を観察することによる課題発見が重要だからです。

2. エクスペリエンスマップの視覚化

調査をしたあとは結果を視覚化する作業に入ります。模造紙1枚に、「Touchpoint(サービス接点)」に沿って、「People/Place(人、場所)」「Action(行動)」「Emotion(感情)」の項目を、先ほどのリサーチを基に、付箋に書き出し、貼ることで可視化していきました。作業を進めていくと、各地点で「どのようなユーザーの感情変化が起こったのか」が明確になり、課題がどこにあるのか直感的に把握することができるようになっていきます。また、議論しながら進めていくことで、同サービスが提供する(提供したい)ユーザー体験について、グループ内で目線が合っていく効果を感じました。
 
UXMap2
 
本来であれば、この後でエクスペリエンスマップの中で表現したい重要指標を絞り、デザイナーが最終アウトプットを作成することで完成となりますが、今回のワークショップでは、ここまでのプロセスをミニマムスケールで行いました。一般的にエクスペリエンスマップを作る際の期間は4〜6週間を要し、また作成に携わるメンバーは、営業、プランナー、デザイナーなど幅広い役職で3~9人程度で作成をすることが望ましいとのことです。
 

まとめ

その重要性は認知されつつあるものの、UXは定量的に測りづらいものです。それを丁寧に分解し、分かりやすく可視化するエクスペリエンスマップの手法は、今後ますますサービスの立ち上げ・改善・運用を行っていく上で重要になっていくでしょう。僕らはユーザーの声に耳を澄まし、挙がってくる課題を解決するだけでなく、彼らが潜在的に抱えている課題がどこで発生しているのかを明確にすることで、サービスを進化させていく必要があると思います。

実際に作成されるエクスペリエンスマップは、プロジェクトや組織に応じて見せ方が大きく変わってくるものではありますが、その根底には「ユーザーの体験を可視化する」という共通マインドがあります。僕らも自分たちの扱いやすいような形にこの手法を落とし込んで、サービス開発の現場でガンガン活用していくべきでしょう。
 

筆者プロフィール

11391321_818954328201717_2571999178200935678_n-1

赤木 謙太(AKG) 
株式会社リクルートジョブズ IT戦略室 デジタルマーケティング部 R&Dグループ
2015年4月に中途入社。UXデザイナー、ディレクターとして新規サービスのディレクションを担当。

kosuke

関根 光翼
株式会社リクルートジョブズ IT戦略室 デジタルマーケティング部 R&Dグループ
2013年4月に新卒入社。ディレクターとしてシフト管理アプリ「シフトボード」の企画・開発を担当。